東京高等裁判所 昭和26年(ネ)867号 判決 1952年6月02日
控訴人 全逓信労働組合東京地区本部
被控訴人 国
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は別紙目録(但し、原判決未尾添附のもの)表示の建物中図面表示の室に対する被控訴人の占有を解き、控訴人の委任する東京地方裁判所執行吏に保管を命ずる。執行吏は右室を控訴人に限りその使用を許さなければならない。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実並びに証拠の関係は、控訴代理人において本件仮処分の本案訴訟は提起してないと述べ、被控訴代理人は右事実はこれを認めると述べた。(疏明省略)
理由
按ずるに本件仮処分の申請は本件事務室に対する控訴人の占有が昭和二十五年十一月十一日被控訴人によつて侵奪されたことを原因とする占有回收の訴をその本案訴訟とするものであることは、控訴人の主張自体に徴して明かである。而して占有回收の訴は侵奪の時から一年内にこれを提起することを要するものであるところ(民法第二百一条参照)本件に関しては未だその本案訴訟が提起されていないことは当事者間争がないから、控訴人の主張する侵奪の時から既に一年以上を経過した今日においては、控訴人は本案訴訟により前記占有の回收をすることができないものといわざるを得ない。従つて本件に関してはその被保全権利がないことに帰するから、本件仮処分申請は爾余の点につき判断をなすまでもなく理由がないことが明らかである。
されば控訴人の本件仮処分申請を却下した原判決は結果において正当であつて、本件控訴は理由がないから、民事訴訟法第三百八十四条第二項、第九十五条、第八十九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 渡辺葆 牛山要 野本泰)